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Simple is the BestAQBインプラントシステム

■ シンプルインプラント講座 第8回
 連続紙上講座【シンプルインプラント講座】第8回目は、「直径3mmAQBという1ピースにしかない選択肢」で1ピースAQBの優位性をお伝えします。 今回もシンプルインプラントの提唱者のお一人、杵渕孝雄先生に臨床上のヒントを交えながら論じていただきます。


杵渕歯科医院院長 杵渕孝雄先生 

 1ピースの優位性についてこれまでに述べてきた。 今回は「直径3mmAQBという1ピースにしかない選択肢」というテーマで1ピースAQBの優位性を論じることにする。

直径3mmAQBは下顎前歯部専用という教義
 AQBインプラントの限界を見極めようと、さまざまな症例にチャレンジしながら植立して18年以上になるが、直径3mmAQBに限っては下顎前歯部(中・側切歯)専用となっているため、2003年10月まで頑なにその教義を守って来た。
というのも、製品発売以来、下顎前歯部以外に植立した直径3mm症例が破折したという報告を何回もアドバンスの方から聞いていたのと、自験例で下顎第2小臼歯部に植立した4MLが2年後に破折するという経験もあったためである。
AQBのHApの骨結合は強力であるため、クリアランスが大きい場合、歯頚部の最初のネジの谷部に相当の応力がかかることが予想される。 確かに直径3mmといっても、ネジ谷部では直径2.5mmくらいであろうから、強い側方力が咀嚼により繰り返し作用すれば、金属疲労で破折してもおかしくない。


恐る恐る植立し始めた直径3mmAQB
 しかし、既にAQBを植立しCrが入り、第二の永久歯を実感した患者さんが、さらに他部位の植立を希望している場合、直径4mmを植立予定で手術時フラップを開けてみたが、直径4mmはとても無理であるという顎骨に遭遇することがある。 患者さんの強い願望に負け、上部構造を連結すれば何とかなるかなという思いで、2003年から恐る恐る植立して、経過をみはじめた。 下顎前歯部以外に植立した直径3mm症例はIAI 研究会第9回学術大会で発表した2006年8月までの3年間で、20症例47本であった。 発表に際して直径3mm症例の安全な植立と補綴法をしっかり考察したこともあり、その後この1年間で、さらに21症例50本が追加され、2003年から下顎前歯部以外に植立した直径3mmAQBは計41症例97本となっている。
 いくら下顎前歯部は欠損しにくい部位であるといっても、同じ時期に下顎前歯部に植立した3mmAQBが5症例7本であるから、私は直径3mmAQBを下顎前歯部以外に植立し始めてから、適応症が大きく拡大したことになる。
?欠損歯数と同本数ですべて3?の植立例
?欠損歯数より多い本数の植立
▲※1 ▲※2
?欠損歯数より少ない本数の植立 ※1幅の狭い顎骨は、骨髄部が少なく、血行に乏しい傾向があるため、熱傷を起こさない注意が必要

※2右側の感染も治癒し、引き続き左側も同様に植立

※3歯槽骨頂に緻密層ができ、周囲の骨密度も上昇

※4左側は直径3?AQBを含む植立をして連結冠であるが、右上2は両隣が天然歯のため単独植立。
将来、右上1が抜歯になったら右上1にも植立して右上2と連結冠を入れれば安全と考えている。
▲※3
?欠損歯数より少ない本数の植立
▲※4


下顎前歯部以外に植立した直径3mm症例のまとめ
<直径3?AQBの症例分類>
1.欠損歯数と植立本数

 1)欠損歯数と同本数の植立:
35症例  76本
 2)欠損歯数より多い本数の植立:
 4症例  13本
 3)欠損歯数より少ない本数の植立:
2症例    8本


2.複数本植立と単独植立

 1)複数本がすべて直径3mmの症例 :
21症例  67本
 2)複数本の中に直径4または5mmを含む症例:
14症例  24本
 3)直径3mm単独植立の症例:
6症例    6本
 症例を「欠損歯数と植立本数」「複数本植立と単独植立」の二つの観点から症例分類をすると右記のようになる。
 欠損歯数と植立本数では「同本数」が多く、これが原則であると思う。 「多い本数」は右下765や左下567の3本欠損に3mmAQBを4本植立した場合や、近遠心径があって頬舌径が狭いため直径5mmAQBの植立ができないような右下6部に4MMと3MMを植立した場合が含まれる。 「少ない本数」は上顎前歯小臼歯部の5本欠損で、切歯管部位の植立を避けたため、3mmAQBを4本植立した場合である。
 また複数本植立が原則で、「すべて直径3mm」は植立部位の骨幅が全域にわたって 狭い場合で、「直径4または5mmを含む」は幾分骨幅が広い部位に直径3mmより太いものを同時に植立できる場合である。 「直径3mm単独」は極力避けたい症例であることに間違いない。

下顎前歯部以外の直径3mmAQBの原則
?できるだけ間引かずに欠損歯数かそれ以上の本数を植立する
?できるだけ複数本を植立して連結補綴物とすること
?上顎大臼歯部には植立を避けること


直径3mmAQBの利点ならびに課題とその対応法
 症例数こそ徐々に増えてきたが、観察期間はまだ短いので、断定的なことはいえないが、私なりに以下のように直径3mmAQBの利点ならびに課題とその対応法に関する考察を行ってみた(下表)。
 また2007年8月に新発売となったT-typeに直径3?ではT3MSとT3MMの型番が追加されたので、さらに審美性が改善する可能性もある。

直径3mmAQBの利点
?幅の狭い顎骨にも植立できる
?骨裂開などが起きにくい
?手術侵襲は直径が大きいものに比べて少ない
?術後の治癒経過もトラブルが少ない
?顎堤粘膜の薄い場合など、サーキュラーナイフを使用しなくてもインプラントの前後で顎堤粘膜は縫合閉鎖しやすい
?最終補綴物装着後のブラッシングにおいては、頬(唇)舌径が狭いので、不潔域も少なく、歯ブラシでほとんど清潔に保つことができるなど清掃性に優れている

直径3mmAQBの課題とその対応法
●細いため、過度の咬合力、特に側方力で折れやすい
⇒間引かず複数本植立し、補綴物は連結する。また直径4mmより弱めの咬合負担力の付与を心がける。
●骨密度の低い上顎大臼歯部では脱臼の危険性もある
⇒上顎大臼歯部の植立は避ける。
●細いため、支台歯形成時の方向調節性が少ない
⇒植立時、平行性を最優先にする。
●模型は超硬石膏でも折れやすい
⇒ほとんどの場合、エポキシ樹脂模型を作成する必要がある。 またインプラント補綴の一般論であるが、意思の疎通の取れた、精度の高い技工物を作成してくれる技工所を伴侶の友とすることが重要。
●下顎前歯部以外では、細いためそのままでは審美性が劣る
⇒補綴物の審美性を上げるため、歯肉縁下まで形成し、マージンからただちに豊隆させ、自然に近い emergence profile を確保するなどの審美性の工夫が必要である。

むすび
 この記事を読んで、細くて植えやすいのでどんな症例にも3mmAQBというのは止めて欲しい。 やはり太いものが植立できるにこしたことはない。特に大臼歯部は原則として直径5mmを植立したいものである。 3mmAQBについては、ソケットリフトと共に、適応症の拡大に重要で、書きたいことは尽きないが、また別の機会にいろいろな症例を紹介していこうと思う。 さて次回は、「インプラントの恩恵を広く国民に安い価格で提供できるという優位性」という観点で、1ピースAQBの持論を展開しようと思う。

参考文献:
・IAI 研究会第7回学術大会後抄録集(2004 年)、1ピースAQB インプラントでの審美性の工夫
・IAI 研究会第9回学術大会後抄録集(2006 年)、下顎前歯部以外に植立した直径3mm症例の検討
杵渕孝雄先生
東京医科歯科大学歯学部卒業。歯学博士。三井記念病院歯科・歯科口腔外科科長、などを経て、現在、杵渕歯科医院 院長。

 
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